コストダウンもできない「生ぬるいリストラ」がJAL再建を危うくする
ついに財務省まで2次破綻を懸念し始めた

 更生計画の提出期限まで、あと1週間に迫ったにもかかわらず、主要行からリファイナンスの協力を取り付けられず、日本航空(JAL)再建の前にたち込める暗雲は濃く厚くなる一方だ。

 TBSの報道によると、財務省もJALに「2次破たん」のリスクを感じ取っており、それを憂える極秘リポートを作成し幹部に説明したという。

 いったい、機構とJALが進めるリストラ策のどこに欠陥があるのだろうか。

 新聞報道をいくら丹念にフォローしても、「JALには2次破たんのリスクがある。それゆえ、今回の更生手続きに投入される約1兆円の公的資金、つまり血税が回収できないことが懸念されている」と言われても、ピンと来ないかもしれない。

 新聞には、それほど実態を無視した、あたかも再建が順調であるかのような記事が溢れているからだ。過去2、3週間に報じられた記事の例をいくつかあげると、

 「日航、再上場の目標は12年末まで、更生計画に明記へ」(朝日新聞など)

 「主力取引5行 更生計画、来週に承認」

 「日航、資産超過248億円に」(いずれも日本経済新聞)

 「日航 4~6月期の営業黒字達成 国際路線とコスト削減が牽引」(MSN産経ニュース)

 といった具合である。

 その半面、お盆休み中(8月6日から15日まで)の利用実績で、国内線、国際線の両方で提供座席数を前年の8~9割に減らしたにもかかわらず、利用率は7~9割にとどまった。つまり、JAL自身が大変な不調だったと認める発表をしている。そのことは、マスメディアは申し訳程度にしか報じていないのだ。

 そんな偏ったJAL報道が大手を振ってまかり通る中で、関係者の間で大きな話題になったのが、TBSが15日付の報道番組「報道特集」で放送した財務省の極秘リポートの存在だ。

 番組によると、これは野田佳彦財務大臣への説明のために、財務省が作成したA4用紙5枚のリポートで、中には「主要行によるリファイナンスの了解も取り付けることができていないような更生計画案では、2次破たんの懸念が大きくなる」と明記しているという。

 実は、財務省の問題意識は、今年1月19日付の本サイトのコラム「『2次破たん』囁かれる稲盛JAL"イバラの道"」以来、筆者が折に触れて報じてきた取材の成果(JAL再建の混迷)と一致する点が少なくない。

 というのは、あたかも同じものであるかのように「プレパッケージ型」(事前調整型)と称しながら、今月18日に米証券取引委員会(SEC)に再上場を申請したゼネラル・モーターズ(GM)のそれとJALの再建計画では、スタート時点から大きく実態が異なっていたからだ。

 GMの場合は、オバマ政権の厳しい査定があり、リファイナンス計画や再上場計画はもちろん、再建計画が細部に渡って詳細に詰められていた。対照的にJALの場合はそういう詰めがほぼすべて欠落していた。

 まさか、公的資金による救済を受けている航空会社からの広告収入を期待して自主規制したわけではあるまいが、日本のマスメディアは押し並べて不思議なほど、その相違点の報道に消極的だった。

 ここへきて、より深刻な問題となっているのは、1月の会社更生法の適用申請以降、実際に再建可能なリストラ策とビジネスモデルの再構築を再建計画に盛り込むことによって、更生計画の提出期限までには取り付けられる可能性があると見込まれていた、主要行からのリファイナンス(追加融資)の協力を最後まで取り付けられずに期限が到来しそうなことである。

 これは、追加で融資をしても回収し損なうことはないと銀行が判断できるリストラ策やビジネスモデルの再構築を、機構とJALが打ち出せなかったからだ。つまり「銀行として、JALの2次破たんのリスクは小さくないと判断した」(主要行関係者)ということなのである。

 いったい、何がいけなかったのか。JALは人員削減(今年度中に1万6000人)を始め子会社のホテル売却など実に様々なリストラ策・コスト削減策を打ち出してきたはずである。では、何が足りなかったと、主要行は判断したのか。

1兆円近い公的資金はドブに捨てたも同然

 ここで、カギを握るのは、「ユニット・コスト」(航空業界では1座席当たりの平均コストの意味)という概念だ。航空業界がこの概念を重視するのは、下手なリストラをやったのでは、リストラ以上に収入が減ってしまい、収益が悪化する結果を招きかねないからである。

 極端な話、ドル箱路線のパイロットを解雇して、コストセンターの本社スタッフを残したのでは、コストの減少以上に収入が大きく減ってしまい、一向に収支が改善しないというわけだ。

 驚くべきことだが、前述の関係者はこう不信を募らせる。

「6月段階の計画によると、ユニット・コストは、2009年の1座席当たり・1キロ当たり12.6円という実績 が減るどころか、2011年度に13.0円、2012年12.7円と高止まりが続く内容になっている」

 もともとJALは国際航空業界のライバルたちと比べて、このユニット・コストが高いという弱点がある。あえて、最近話題のローコストキャリア(格安航空会社)の中でも低いところと比べると、「JALは5倍近い水準にあり、とても競争力を養うことなどできないと判断した」(同)らしい。

 付言すれば、JALは過去数年、いくつも再建計画案を作っており、一時は、ユニット・コストの削減を模索したこともあった。が、今回、最終的に、ユニット・コストの増加を容認する生温いリストラでお茶を濁した背景には、豊富な資金を持ちながら、航空業界にはズブの素人である機構が再建のスポンサーに就いたことが影を落としたという。

 やはり、JALの再建から2次破たんリスクというフェクターを取り除くのは容易なことではなさそうだ。1兆円近い公的資金(我々の血税)もどぶに捨てたような状態になっている。

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