「鳩山さん、悪いのはあなた、
国民のせいにしないでね」

田中秀征×田崎史郎
あれだけのお金持ちだから、悪いことはしないよね。そんな根拠のない信頼だけで、総理は務まるものなのか―細川政権で首相補佐を務めた田中氏と時事通信解説委員長の田崎氏はどう見ているか。

曲目を決めない指揮者だね

田崎 鳩山政権の4カ月間を見ていると、政権交代が起きたのではなくて、攻守交代が起きただけという感じがするんですね。政権の体質そのものが自民党のときと比べて、どれだけ変わったのか疑問です。昨年暮れの予算編成では、アメとムチによる露骨な参議院選挙対策が行われました。

田崎史郎

 民主党は政治主導の一つの形態として、政策決定を内閣の下に一元化するとマニフェストに掲げました。ところが、予算編成などを見ていると全然、内閣に一元化されていない。ガソリン税の暫定税率の維持などで小沢一郎幹事長が党の要望を申し入れ、最終的に党主導で決まっています。

 田中さんはどのように見られていますか?

田中 民主党政権に対する有権者の許容範囲はまだまだ広いですが、鳩山政権は失敗してもいいところを重大視し、逆に失敗してはいけないところを軽視しているという印象を受けます。

田崎 具体的にどんなところでしょうか。

田中 今回の政権交代をもたらした最大の要因は、民主党が自民党時代の官僚依存の政治から脱却して、政治主導体制を築くというところにありました。しかしこれまでの政権運営を見ると、その根幹部分で腰砕けになっている。深刻な事態ですが、その背景には鳩山由紀夫さん自身の政治手法が大きく影響しています。

田崎 ええ。霞が関で聞いても、民主党に聞いても、鳩山さんはとにかく自分で決定しない人だと言います。ある人が意見を言うと「そうだ」、別の人が別の意見を言うとまた「そうだ。それ、いいね」となる。

田中 私も鳩山さんが総理大臣になるにあたって一番心配したのが、彼の政治手法なんです。

田崎 普天間基地の問題でも、日米関係、沖縄県民の気持ち、連立の維持、すべて大事だと言う。そうすると何も決められないですよ。これは総理自身の資質に帰するので、おいそれと解決するものでもない。

田中 昔から、鳩山さんは問題を泳がせるんです。たとえて言うと、大きな鍋でいろんな具材を煮ているようなもの。その中には小沢一郎さんもいるし、社民党もいるし、亀井静香さんもいるし、沖縄県民もいるし、オバマ大統領もいる。時々フタを取ってかき回して、またフタを閉める。何を作っているんだと聞いても「いいものができる」と言うだけで、それ以上、何も言わない。結局、何ができるか、自分でもよく分かっていないのではないか。鳩山さんはそういう手法で今まで政治生活を送ってきたと思うんですよ。

田崎 言い得て妙ですね。

田中 しかし、今まではある種の成功体験を得てきたとしても、総理大臣としてこの手法は通用しません。

田中秀征

 私が推測するところ、鳩山さんは普天間基地の問題をずっと先送りしたかったはずです。社民党が基地を辺野古へ移設するなら連立を離脱すると宣言をして、ホッとしたんじゃないでしょうか。先送りの責任を社民党に転嫁することができるからです。今回の予算編成に対する小沢さんの要望も同じでしょう。

田崎 たしかにそうです。

田中 メディアや国民の批判がそっちに向かうので、責任が自分のところに来なくなるんです。ただし、この手法には限界があって、それが続くと、みんなが首を傾げてくる。

田崎 鳩山さんは総理の役割について「コンダクターだ」とおっしゃいましたね。「皆さんのいい音色が出るようにやるのが私の仕事です」と。けれども、タクトを振らないんですよね。みんなが好きな楽器を好きなように奏でている状況がずっと続いている。

田中 それ以前に、曲目を決めないんですよ。

田崎 鳩山さんの言葉使いにも問題があると思います。使ってほしくない言葉は、「国民」ですね。

田中 まったく賛成です。

田崎 「国民」というと「みんな」なんですよね。国民の要求はそれぞれ違うわけです。それなのに「国民の思いを大切にして」などと言って、本来は自分の決定のはずなのに、「みんな」のせいにして曖昧にする。

田中 言葉を軽々しく使ってもらいたくないですね。

田崎 元秘書が政治資金規正法違反で起訴された直後の会見で鳩山さんは、進退問題について「国民の気持ちが傾いたときには……」と語り、世論の動向次第では進退を考えることを匂わせた。首相の進退は本人しか決められないのに、こういうことを言うんです。

田中 それも鳩山さんの政治手法なんですよ。

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