中国
日本をGDPで抜いた中国がシャンパンを抜いて祝わない理由
ついに世界第二位の経済大国へ

 13369対12883――。

 ついに日本が、GDPで中国に追い抜かれる日がやって来た。8月16日、内閣府が、今年第二四半期(4~6月)の日本のGDPが、1兆2883億ドルだったと発表。先に中国は、1兆3369億ドルと発表していたので、3ヵ月間の統計とはいえ、中国が初めて、日本のGDPを上回ったことになる。

 このニュースは、こちら中国でも一斉に、しかも一風変わって報道された。

 例えば、人民日報社が出す中国を代表する国際情報紙『環球時報』(8月17日付)は、「中国は『世界第二』の高い帽子を戒めとする」と謙虚な見出しで、次のように一面トップで報じた。

<わが国はこの5年間、イタリア、フランス、イギリス、ドイツを、GDPで追い抜いてきたが、今回ついに、日本を追い抜いて、世界第二の経済大国となった。日本では、内閣府がこの事実を発表した10分後に、日経平均株価が、今年最大の下げ幅となる9100ポイントまで下落してしまった。実際、中国の今年の予測経済成長率は10%なのに、日本は3%にすぎない。日本は、1968年に西ドイツを追い抜いて以来、40数年間にわたって守り抜いてきた「世界第二の経済大国」の地位から陥落したのだ。

 だが、いまの日本が、急速に進む高齢化社会に苦しんでいるように、中国も急激に進む都市化の陣痛に苦しんでいることを忘れてはならない。中国の国土はアメリカとほぼ等しいが、一人当たり平均の経済規模で見れば、アルバニアと同規模であり、いまだアメリカには遥かに及ばない国なのだ>

 北京を代表する新聞『新京報』(8月17日付)は、2つのグラフを、象徴的に上下に並列した。上の折れ線グラフは、「中国と日本の過去6年間のGDPの変化」で、2004年に4・6兆ドル(日本)対1・9兆ドル(中国)だった両国のGDPが、昨年は5・0兆ドル(日本)対4・9兆ドル(中国)に切迫するまでを示している。

 だが下の表グラフは、「主要国家の本年第二四半期GDP」で、13369億ドルの中国を中心にして、その右隣に、12883億ドルの日本が並立されているが、左隣には、145977億ドルのアメリカが、立ちはだかっている。中国の10倍以上の高さなので、米中の経済規模の差は一目瞭然だ。

 さらに翌々日(8月19日付)の『環球時報』は、一面トップの見出しが、「中国はなぜGDPで『世界第2位』となったのにシャンパンを開けて祝わないのか」。内容は以下の通りだ。

<1997年のアジア通貨危機の際に、中国は人民元の引き下げをしなかった。2008年の世界的金融危機の際も、中国は人民元の為替を固定し続けた。こうしたことが、経済大国としての中国の国際貢献なのであり、中国が国際責任を回避しているという非難は誤りだ。アメリカはすでに、半世紀以上にわたる世界最強国としての経験があるが、中国の現状はまだまだ複雑で、山積する難題の処理だけで精一杯だ。その意味で、鄧小平が唱えた「韬光養晦」(目立たずに実力をつけていく)という遺訓は、いまだに生きている。この遺訓は、いつかアメリカを追い抜く日まで、いや、たとえ追い抜いた後も、生き続けるかもしれない>

『環球時報』のライバル紙にあたる『世界新聞報』(8月19日付)も、やはり一面トップで「アメリカは中国に対して焦りの色を強めている」という見出しで、次のように記した。

<中国がGDPで日本を追い越したというニュースに、アメリカも黙っていなくなった。このペースで行けば、10年以内に中国はアメリカをも抜いてしまうからだ。アメリカの第二四半期の成長率を見る限り、年換算で2・4%の成長に過ぎない。しかもアメリカは現在、日本同様の経済停滞に頭を悩ませており、アメリカでも「失われた10年」と後に言われることになるかもしれない。そのためアメリカは、中国に対する焦燥感を強め、経済の失点を軍事でカバーしようと、中国近海で異例の大規模軍事演習を繰り返しているのだ>

 中国は周知のように、共産党が「指導」する社会主義国のため、国際報道には必ず「方向性」がある。これら中国紙の「GDP報道」を精読して顕著なのは、日中のGDPの比較記事が、いつのまにか米中問題にすり替わっているという点である。

 中国の外交関係者が解説する。

「現在の中国外交には、中米関係を除けば、単純な二国間関係はありません。例えば、中日関係は、中日米関係であり、中国・ASEAN関係は、中国・ASEAN・アメリカ関係といった具合です。つまり中国外交はすべて、中米関係に帰着し、他の国や国際機関との関係は、中米関係という太い幹から派生する枝葉に過ぎないということです」

中国の脅威を指摘する70ページのアメリカ国防総省報告書

 こうした外交の現実は、アメリカにとっても、ある意味同様である。いまのオバマ政権にとって、「中国の台頭はアメリカにとって脅威か」という命題が、匕首のように、喉元に突きつけられているのである。

 この命題について、中間選挙を11月に控えた現在は、「脅威である」というのが、アメリカにとっての「模範解答」のようだ。

 アメリカ国防総省は8月16日に、2010年版の「中国の軍事力と安全保障の進展に関する年次報告書」を発表したが、それを読むと、「中国台頭」が及ぼす脅威について、70ページにわたって詳細に羅列してある。また、アメリカ軍はこの夏、中国を取り囲むように、東アジアの海域で大規模な軍事演習を繰り返している。8月18日には、中国が強く反発していた黄海での軍事演習を9月に挙行すると、正式に発表した。

 中国の外交関係者が続ける。

「中米関係の基本的位置づけは、『協調』ではなく『競争』です。だから中国はまず、アジア№1の政治・経済・軍事大国となって、アジアに君臨しなければ、アメリカと競争していくことはできません。今回、GDPで日本を追い抜いたからといって、わが国がシャンパンの栓を抜かないのは、日本でなく、アメリカを見ているからなのです」

 来る28日には、日本の6閣僚が訪中して、「日中ハイレベル経済対話」が北京で開かれる。日本側は、単なる二国間協議ではなく、アメリカという「影の参加者」がいることを十分加味しながら、会談に臨む必要があるだろう。

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