「首相外交特別顧問」にも浮上 対中国外交のキーマンにもなった鳩山前首相の復権
菅、小沢両陣営から引っ張りだこ

 8月19日午後、軽井沢で鳩山由紀夫前首相率いる鳩山グループ恒例の夏季研修会が、作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏を講師に招き開催された。耳目を集めていた小沢一郎民主当然幹事長は夕方の懇親会のみ出席、9月14日に実施される党代表選出馬について、一切言及しなかった。

 一方の鳩山氏も「挙党態勢」の確立をアピールしたものの、再選を目指す菅直人首相を支持するとは言明しなかった。

 ところで、鳩山氏は研修会直前の16日から18日まで中国を訪れた。

 民主党の「日中環境協力推進議員懇談会会長としての訪中だが、17日午後には北京市内の人民大会堂で温家宝首相と会談、同日夜は釣魚台(ゲストハウス)で唐家璇前国務委員(外交担当・現中日友好協会会長)と会食するなど、中国側は前首相の訪中といえ破格の厚遇で迎えた。

 もちろん、それには理由がある。16日に鳩山氏が視察した河北省唐山市の南100キロにある曹妃甸工業区がそれだ。

 総面積310平方キロという広大な土地を有する同工業区は、物流、鉄鋼、石油化学、プラント製造、資源基地、ハイテク等を主力に、電力、環境等の関連産業を推進、「循環型産業システム」を実現とすると同時に、情報、金融、観光等サービス業の発展を目指す。

 投資総額約5兆元(約62兆5000億円)で08年1月からスタートした第11次5ヵ年計画である。中国・胡錦濤政権は日本に対し、同工業区の一角約40kmを「中日唐山曹妃甸エコ工業パーク」とし、日中の省エネ・環境協力のモデル地区とすることを提案している。

 故鄧小平における「深圳」、江沢民・前国家主席における「浦東」に匹敵する、言わば"胡錦濤(国家主席)プロジェクト"が、まさにこの「曹妃甸」なのだ。

 2012年秋開催予定の第18回共産党大会で総書記に選出され、さらに翌13年春の全人代で国家主席就任が確実視される習近平国家副主席(共産党政治局常務委員)の新体制にバトンタッチするまでにこの曹妃甸工業区を完成させることが現中国国家指導部の至上命題である。

 その工業区に鳩山前首相が視察した意味は小さくない。日本の技術支援・投資を期待する中国側が長期民主党政権を前提に、日本側とのパイプとして先に衆院議員引退言明を撤回した鳩山氏を、事実上"指名"したということである。今回の鳩山訪中は、唐家璇直系の程永華駐日中国大使が鳩山氏に直接働きかけ実現したものだ。

 唐山市滞在中、中国の「革命第7世代」の趙勇・唐山市共産党書記(次期河北省副省長が内定)が鳩山氏をアテンドしたが、同氏は「第5世代」の汪洋・広東省党書記、そして「第6世代」の胡春華・内モンゴル自治区党書記、周強・湖南省長等と同じく、胡錦濤直系の「共産主義青年団(共青団)」出身である。

小沢政権なら副総理・外相就任も

 さらに鳩山氏は9月第1週、ロシアのヤロスラブリでメドベージェフ大統領が主宰する「ロシア版ダボス会議」、10月上旬にニューヨークで播基文国連事務総長が主宰する気候変動に関する国際委員会に、それぞれ首相特使として出席する。

 加えて、日韓併合100年を機に8月10日に発表された「首相談話」にあった朝鮮王室儀軌図書の返還のため、10月中に目録を携えて訪韓、李明博大統領に手渡すことになっている。儀軌図書返還は、鳩山氏が首相在任中に実現したかったものだ。志半ばで首相辞任を余儀なくされた鳩山氏は、実は不完全燃焼症候群である。

 仮に菅政権存続となれば、党代表選直後の内閣改造・党役員人事の際、北方領土返還のための日ロ交渉、気候変動を中心とする国際環境問題などを担当する「首相外交特別顧問」に指名されるはずだ。

 ところがここに来て、小沢氏が22日~25日に開催される「小沢政治塾」期間中に、「総(理)・代(表)分離」論を掲げて代表選出馬を表明するという情報が駆け巡り、注目を集めている。

 そして小沢氏が代表・首相就任すれば、鳩山氏を「副総理・外相」に迎えるという「ニンジン」をちらつかせているというのだ。いずれにしても、一度は議員辞職を公言したはずの鳩山氏が今やキーパーソンになったことだけは確かである。

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