ライフ
東浩紀(批評家・作家) vol.3
「ガラケー日本にこそ電子国家実現のチャンスがある」

vol.1 はこちらをご覧ください。

vol.2 はこちらをご覧ください。

:よく信頼社会とか安心社会とかいいますが、日本人は信頼してないんですよ、他人を。

 自分の近くの人間だけしか信頼できない。匿名の他者を信頼するっていうことがやっぱりできてないんです。それがネット時代になって弱点としてかなり顕著に現れてきている。

 中途半端に相手に生活が見える分、疑心暗鬼ばっかりが高まっている。一回かなり透明にしないとダメなのかなっていう気は最近してきました。

 もともと僕は、「ネットとか匿名でいいじゃん」という派だったので、微妙に立場変わってきてるんです。

佐々木:匿名論。確かに微妙ですよね。

:微妙です。ただ、僕自身は一回も匿名になったことがない。それどころか変名も使ってない。東浩紀っていうのは本名だし、二十代の頃から仕事してたってこともあって、ずっとネット上でも本名でやってた。だから僕自身は透明であるってことに全然怖さを覚えない。

佐々木:そうすると、有名だからじゃないかっていう批判がくるでしょ。

:有名な方が怖いっていう考え方もあるんですがね(笑)。

ネット上でのセキュリティばかり気にするのはなぜか

佐々木:本名ではなくても、ネットでの活動が中心の人は、そこになんか「一気通貫」したペンネーム、ハンドルネームでもいい。それが透明化されて何を書いたか見えればそれで別に構わないわけですね。

:むろん別に戸籍上の名前と結びついている必要はありません。

佐々木:最近、国民IDの話をいろいろ取材していると面白い話があります。例えば、住民票を取得する行為って、わりと簡単に誰でも出来ちゃう。

 人の住民票も勝手に取れちゃうし、ヘタすると戸籍だって書き換えたり出来る。でも、これをネット上でやるとなるとすごくセキュリティがうるさい。

 例えばe-Taxっていう悪評高い税の申告システムがあります。あれも住基カードをわざわざ市役所から取ってきて、その住基カードに公的個人認証を入れて貰って、カードリーダーも買ってきて、パソコンに繋いで、その上で画面上で入れなきゃいけない。最後まで辿り着く人があんまりいないっていう恐ろしいシステムなんです(笑)。

:ハハハ。

佐々木:なんでそんなことになるかっていうと、ネット上で偽のアカウントを取られてやられたら大変だ、セキュリティを高めなくてはいけない、100%のセキュリティが必要だって話になってるんですよ。

 でも一方で、実際に窓口に行くとセキュリティはヤワですよ。昔の日本社会ってムラだったでしょう。例えば村役場に行くとみんな顔見知りだから知らない人が住民票を取りに来たらすぐ分かる。そういう前提の上であの適当な仕組みなっている。

 それが崩壊してきたにもかかわらず、相変わらずリアルの対面での窓口がそういう仕組みのまま。でもネットに関してはムラじゃなくて外部なんですよ。外部だからそれを徹底的に守らなくきゃいけない。ムラの外と内という意味では、相変わらずネットはムラの外で、窓口はムラの内という切り分けが延々と続いている。

:実際、リアルにおけるセキュリティ意識のなさとネットに対する不信感のギャップは異常です。

佐々木:すごいですよね。

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