袁世凱にそっくりな菅直人の「権力欲」
政治家でしか生きていけない無能な輩をどうすればいいのか

菅直人という人物が、袁世凱によく似ていることを痛感した〔PHOTO〕gettyimages

 菅首相の言動を見ていると、誰もが、その粘り腰、権力への執着に驚く。人を欺くことなど平気の平左、多くの国会議員が脱帽していると思う。ここまでやれなければ政治家として失格だと言われると、私など真っ先に失格だ。

 辛亥革命100周年を記念して、今、孫文の伝記を書いているが、その関連で中国近代史に登場する政治家や思想家についても研究している。その過程で、菅直人という人物が、袁世凱によく似ていることを痛感した。以下の文章を読んでみるとよい。

〈 袁世凱も、よく端倪すべからざる人物と言われたものであった。謀略好きで、その奇策深謀は、往々にして、なにを狙ってのことかわからないことがあった。その意味では、AからZにいたる筋道がたどりにくい人物なのだ。しかし、打つ手がすべて、立身出世のため、権勢欲のためであって、それ以外のなにもののためでもないという点では、首尾がちゃんと一貫して、これはじつにわかりやすく、端倪できる人物であったと言わねばならない。・・・

 すべて自己の権勢欲から出たこととしてみれば、彼のとった行動は、すらすらと解けるのである。むしろこんなわかりやすい人物はいない、といってもよいだろう。・・・

 彼は清朝最後の総理大臣として、革命派と手を握り、清朝に臨終を宣告したのだ。王朝最高の大臣が、それにとってかわった共和国の大総統となった。ふつうの常識をもった人には、これはわかりにくいことだろうが、王朝の大臣も共和国の大総統も、権力者であるという点では共通している。それがわかれば、彼の変身はふしぎでもなんでもない。 〉(陳舜臣『中国近代史ノート』より)

 まさに菅首相の行動は、「すべて自己の権勢欲から出た」ものである。鳩山前首相に「ペテン師」呼ばわりされても、密室の協議、現首相と前首相のどちらが嘘をついているのかなど、誰も分からないから、「気にしない」のである。

「震災対策に一定の目途がつくまで」首相の座に居続けるという。今、子ども達の間で、「一定の目途がつくまで」という言葉が流行っているという。もちろん、口約束、言い逃れの意味である。

 それにしても、政治家とはどういう人種なのか自問したくなる。マックス・ヴェーバーは、名著『職業としての政治』の中で、政治家に必要な資質として、情熱、責任感、判断力の三つをあげているが、同時に「虚栄心という致命的な気質」を克服すべきことを強調している。このヴェーバーのような高尚な理論ではなく、「政治で飯を食う」とはどういうことかを考えるべきときが来ているように思う。

民主党の人事を決めるのは「自動車」

 もっと分かりやすく言えば、政治家としてしか生きていけない無能な輩をどうするかということである。

 現代民主主義社会では、選挙で当選して政治家になる。デマゴーグの才能があれば、当選可能であるし、小泉政治以来のポピュリズムの跋扈は、その傾向を補強している。

 市民運動なり、左翼活動なりで、野党的立場で、ときの権力を批判して喝采を浴び、選挙に勝つ。歳費のみならず、秘書、公用車などの特権も付随してくる。貧乏たらしい市民運動家には豪華なご馳走である。

 だから、国会議員まで務めた政治家が、市町村区長に立候補したりする。どんな役職でも、給料さえもらえればよい、しかも就職活動はポピュリズムの選挙活動のみである。こんなおいしい話はない。

 プラトンやアリストテレスに戻るわけではないが、ポピュリズム選挙による政治の弊害をもう少し考えたほうがよい。多くの国会議員が業界や労働界の利権に飛びつく。しかし、国家、つまり税金という甘い汁を飲み尽くす「さもしい」政治家はもっとたちが悪い。

 民主党の人事は、公用車配給という軸で動いている。そうでなければ、大臣が辞任直後に、自分の担当してきた分野の委員長になるはずはない(たとえば、原口総務大臣が総務委員長に、小沢環境大臣が環境委員長に)。

 三権分立の原理などお構いなしの「さもしさ」である。かつて田中角栄は、「カネとポストを配ることができなければ、せめて車でもつけてやれ」と言ったが、それを忠実に踏襲しているのが、民主党である。

 そして、そのような「さもしい」政治家を大量生産しているのが、現在の小選挙区制である。

 一人しか当選しないのだから、冠婚葬祭、盆踊り、新年会、運動会と、政策勉強とは程遠い日常活動が必要になってくる。しかも、落選すれば、何年間も浪人暮らしである。それなら、区長選挙でも何でも出てやろうという気になるのは当然である。これでは、前途有為な人材は政界には入ってこない。

 この人材枯渇が、菅直人という人物を首相におしあげているのである。選挙制度の改革も喫緊の課題である。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら