アップルやグーグルも監視対象に
総務省が「競争モニター制度」でスマートフォンの市場支配力にメス

〔PHOTO〕gettyimages

 消費者利益を損ないかねないとされるアップルやグーグルの市場支配力に対して、遅ればせながら、日本でも競争政策のメスが入る可能性が出てきた。

 利用者が急増しているスマートフォン市場を橋頭堡として、総務省が「電気通信事業分野における競争状況の評価」(競争評価)制度で監視する対象を拡大する検討に入ったためだ。

 とはいえ、競争政策の強化を巡る民間企業の反発は根強いうえ、政府部内での権限争いの激化も予想される。総務省が本格的な市場監視体制を構築できるかどうか予断を許さない。

 ユーザー(消費者)利益の向上に役立つ見直しを実現させるために、我々も、競争評価制度の見直しの行方を注意深く見守る必要がありそうだ。

 そもそも競争評価制度は、総務省が2003年に、電気通信事業者の市場競争の実態を調査する目的で導入した。

 きっかけは、同年の電気通信事業法の改正によって、「事前規制」を廃止したため、市場の混乱をあらかじめ予防するのが難しくなったこと。この法改正では、国際、長距離、地域、衛星といった通信事業の垣根が取り払われたほか、それぞれの事業への参入と退出に関する認可制や料金の事前届け出制などもそろって廃止された。

 事前規制の廃止には、民間企業の活力を利用して市場全体を活性化するという狙いがあったが、その半面で、副作用として、問題や混乱が予想される事業者の参入やビジネスの開始、料金の引き上げなどを、行政が予めブロックすることができなくなる面もあったのだ。

市場見直し案
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 そこで、何か問題が発生していないか、事後的・定期的にウォッチするために、競争評価制度が導入された経緯がある。

 当初は、インターネットの接続事業者が相次いで固定通信事業者の傘下に組み込まれたことの影響や、事前認可が不要になったことで値下げ競争の歯止めがなくなっていた法人向けの大口専用線サービスの実態把握の2つに力点が置かれていた。

 総務省は、市場実態にあわせて競争評価制度をアップデートするため、「競争評価アドバイザリーボード」(座長・辻正次兵庫県立大学教授)を設置しており、これまでもボードの助言に基づいて毎年のように小幅な見直しを行ってきた。

スマートフォンの普及が見直しを後押し

 制度の現状と、アドバイザリーボードが検討中の今回の見直し案については、ここに掲載した総務省作成の資料「競争評価のあり方(素案)」を参照してほしい。

 現状のモニター対象は、資料の「現行」の部分に示されているように、大別して、1.固定の音声通信サービス、2.移動体(携帯電話)の音声通信サービス、3.固定のデータ通信サービス---の3つの分野となっている。

 アドバイザリーボードは昨年12月以降、現在までに4回の会合を開催し、1.と3.の固定系の音声・データ通信の監視の区分を見直すほか、新たに4つ目の監視対象として、移動体(携帯電話)のデータ通信サービスを加える必要があるとのコンセンサスを形成しつつあるという。近くまとめる最終報告案では、こうした見直しの方向を明記したうえで、来年実施する2011年度分の調査から実現する方針という。

 そうした見直しの必要性を高めているのが、このところの移動体通信分野におけるスマートフォンの急ピッチな普及拡大だ。

 電気通信市場では、かつて事業者間の競争の主戦場はADSLや光ファイバーといった固定のブロードバンド網や音声携帯電話の新規ユーザーの囲い込みにあった。が、近年は、タブレット型PCを含むスマートフォンへの乗り換えニーズの争奪戦に主戦場が移っているという。

 例えば、携帯電話の出荷台数は、2007年度に年間4955万台あったが、2009年度には3059万台に減少した。対照的に、2008年度に110万台に過ぎなかったスマートフォンの出荷台数は、2009年度に234万台に膨らんだ。

 こうした変化は、今後、さらに拍車がかかる見通しだ。アドバイザリーボードが先週開催した会合で、構成員の1人である、依田高典京都大学教授は「2016年度には、スマートフォンのシェアが全体の30~40%に達する」との市場予測を示したという。

 さらに、今後、携帯電話各社が、通話料無料で通話できるインターネット電話のソフトウェア「スカイプ」を出荷段階からインストールした端末機を相次いで販売する見通しで、スマートフォンの普及が依田教授の市場予測を上回るペースで進むとの見方もあると聞く。

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